1991年制作の日本映画「夢二」(Wikipedia)にあるシーンのご紹介です。8月9日の記事で書いた「ワイルド・アニマル」とは異なり比較的有名なシーンで、今さらに思われる方もおられるかもしれません。いずれBSやスカパー!で放送があったときに取り上げようと思っていましたが、なかなか放送がないようなので、記事にしてみます。
この映画は独特の作風で有名な鈴木清順の監督作品で、明治~昭和初期に活躍した画家竹久夢二(Wikipedia)と女性たちとの関わりを幻想的に描いています。
作中、夢二のもとへモデルとして使ってほしいという女性「お葉」(広田玲央名、現・広田レオナ)がやって来ます。このお葉は、当時「責め絵」・「縛り絵」(今で言うSMの絵)で有名だった伊藤晴雨(Wikipedia)のモデルをそれまで数年間やっていたのですが、そのために夢二からは自分色に染めるのが難しいという理由で断られてしまいます。
この流れの中で幻想的なシーンが挿入されます。お葉は、田舎の農婦風の女性たちによって足を大根とともに荒々しく洗われ、大きな液状の糠漬け樽の中に茄子や大根とともに全身を漬けこまれます。仰向けの状態で、滑車付きのシーソーのような装置に固定されているらしく、顔が糠味噌に沈んでは浮上し、そのたびに柄杓の水をかけられ、また沈むという繰り返しが何度か映ります。その間、女たちは不気味な仕事唄を歌い、天井からは人形が見下ろしています。途中、明らかに別撮りな糠味噌の付き方をしたお葉が台詞を発するところがインサートされ、「次は先生の番よ。いじめてやろ」とつぶやきます。
この場面は、お葉に染みついた伊藤晴雨の責め絵のイメージや、あるいはそれを別のものへと染め直す過程を描いているのかもしれませんが、この映画ではこういった幻想的な映像が見る人に丸投げされているらしく、どう解釈するのが正しいのかは分かりません。
また、素材として実際に糠味噌を使っているのかどうかは不明です(当時の映画雑誌や劇場パンフレットを見れば何か情報が書いてあるかもしれません)。映像では、沈んで顔が出てくる瞬間は完全に肌が覆われていますが、すぐに水をかけられるため、コーティングされた状態が映るのは一瞬です。
この映画作品自体がわりと有名なので、在庫があるレンタル店も多いと思います。気になる方は本編のほうをご覧ください。私もまだこの前後しか確認していないため、いずれ時間のあるときに全編も見たいと思います。
記事タイトルのDVD発売日は、Amazonに記載されている情報に拠りました。
(11月23日追記)
ご覧の方からメールでいただいた情報です。90年代に放送されていた「CLUB紳助」というトーク番組(Wikipedia)に広田玲央名が出演した際、この場面についてのエピソードを語っており、それによると糠味噌は本物だそうです。また、スタッフをいじめていたので糠味噌のシーンで長く漬けられるという復讐をされたとか、鼻の奥まで糠味噌が入り1カ月以上においが抜けなかったなどの話もあったとのことでした。(情報ありがとうございました。)
竹久夢二が有名になる前までは、美人画といえば江戸時代の絵によく見られるような引き目と鉤鼻だったそうです。竹久夢二は女性の絵を描く時に引き目ではなく、目を大きく描こうと考えた当時としてはモダンそのものの画家だったということでした。(NHKの番組から引用しています。)
現代のアニメや漫画に登場するキャラクターの中には顔の面積の大半を目が占めるような女性がよく見られますが、ひょっとすると夢二の時代から絵に描かれる女性の目がだんだん大きくなっていき、現代のアニメや漫画に至ったのではないかという仮説があるようです。
…messyと全く関係のない話で申し訳ありません。