Top > Works > ビデオカメラの有効センサーサイズを計算してみる (2016年9月20日Twitterから先行掲載、12月11日掲載)
ビデオカメラ・デジカメのカタログや仕様表にはCMOS・CCDなどのイメージセンサーの大きさが必ず記載されていますが、ビデオカメラの場合、センサーの一部しか使わないために、カタログのセンサーサイズと実際に動画撮影時に使用されるセンサーサイズが違っている場合が多々あります。そこで、有効センサーサイズ(実質センサーサイズ)を簡単に計算してみようというページです。
なお、デジカメで写真と4K動画、あるいはフルHDと4K動画で焦点距離が異なる(=使用するセンサーサイズが異なる)という事例については、「デジカメ・ビデオカメラの4K動画時の焦点距離をまとめてみる」もご参照ください。
ビデオカメラの仕様表を見て、レンズの欄にある「焦点距離」と「35mm判換算の焦点距離」の広角側の数値から、有効センサーサイズを計算できます。
以下のフォームに数値を入れて「計算」ボタンを押すと、使用するエリアの対角線の長さ(ミリ)と、有効センサーサイズが表示されます。(半角でご入力ください。小数点以下も入力できます。)
※1型以上のサイズになると○○型という表記はあまり一般的ではないですが、以下のような対応関係になります。
2.70型…フルサイズ
1.7~1.8型…APS-C
1.35型…マイクロフォーサーズ(4/3型)
上記フォームに入力する焦点距離などの数値は、以下の仕様表の例では赤と青の矢印の部分が該当します。
「有効センサーサイズ」の値をカタログのセンサーサイズと比べてみて、差が小さいほど、センサーの領域をめいっぱい使っているということになります。
ここではビデオカメラの仕様表を前提に書いていますが、デジカメの場合でも、動画撮影時の35mm判換算の焦点距離を明記している機種の場合は、同様に動画時の有効センサーサイズを求めることができます。
また、デジカメの仕様表から、写真モードのときの焦点距離で上記フォームを試してみれば、有効センサーサイズと仕様表のセンサーサイズはほぼ合致する(あるいは比較的近い値になる)ことが確認できます。ただし、同じセンサーサイズでもメーカーや機種により微妙な差異があります。
最近の傾向として、4K動画対応のビデオカメラが出始めた2014年頃から現在にかけて、1/2.3型センサー採用の機種が増えました。従来の家庭用ビデオカメラは1/3型~1/2.7型でも大きいほうとされていたため、1/2.3型というとそれよりやや大きくなっている印象がありますが、それらの機種の有効センサーサイズはおおむね1/3.2型です。
つい最近になって登場したもっとも乖離の大きい機種が、パナソニックの「HC-V480MS」・「HC-V360MS」という機種です。この2機種は1/2.3型センサーですが、有効センサーサイズは1/5.66型です。これらは例外的な仕様なのか、それとも今後同様の機種が増えて行くのか、気になるところです。
デジカメの場合、仕様表のセンサーサイズは○○型だけど写真撮影時の有効センサーサイズはそれより大幅に狭い△△型、といった仕様はマルチアスペクト対応の機種などの例外を除きほぼ許容されないので、こういった事例はビデオカメラや動画機能特有と言えます。
逆に、ビデオカメラで有効センサーサイズを掲載していると思われる珍しい例が、業務用機になりますが、パナソニック「AG-UX180」です。
UX180の仕様表(PDF)には「撮像素子:1.0型(有効) MOS固体撮像素子」とあり、「(有効)」という見慣れない表記があります。カタログの表紙も「1.0型MOSセンサー搭載」と謳いつつ、注記にわざわざ「有効サイズ」と書かれています。
この機種のレンズの焦点距離は8.8-176mm、35mm判換算で25.4-508.0mm、有効センサーサイズは0.94型となり、ほぼ1型です。一方で、有効画素数はUHD(3840x2160)のときに約879万画素、DCI 4K(4096x2160)のときに約946万画素となっています。
ここからは推測を含みますが、現行のデジカメやビデオカメラの1型センサーで、総画素数が1000万画素前後のものはほぼ見当たりません。しかし、パナソニックのデジタル一眼GX8などにも使われている一回り大きい4/3型・2000万画素のセンサー(5184x3888)の中央部約879万画素(3952x2224?)を使用すると、ちょうど上記の0.94型相当の大きさになります。
つまり、UX180のセンサーサイズは実は4/3型で、その真ん中の1型相当の部分だけを使っており、そのためわざわざ「有効」という注記を添えた上で1型センサー搭載ということにしているのではないかと推測できます。この機種用に1型・1000万画素のセンサーを独自開発するよりも、一回り大きいとは言え、すでに量産されている汎用性のあるセンサーを流用するほうが、製造コスト的に有利だったのかもしれません。また、1型・1000万画素のセンサーを使っているのであれば、「有効」の注記は不要のはずです。
わざわざそのような記載の方法をとった理由についてはさらに憶測の域を出ませんが、4/3型センサー搭載を売りにしている上位機種AG-DVX200との差異化、一種の遠慮のようなものがあるのかもしれません。あるいは、全然他の理由があるのかもしれません。
なお、下位機種の「AG-UX90」のほうは、「有効」の注記はなく、普通に1型センサー搭載のようです。こちらは4K動画のときは実質0.67型(2/3型)相当、フルHDのときは1型センサーの横幅いっぱいのエリアを使用します。
ともあれ、UX180の例は、メーカーが仕様表のセンサーサイズを実質サイズのほうで記載しようと思えば可能であることを意味します。仮に先ほど挙げたHC-V480MSのセンサーをUX180と同じ流儀で表記するならば、「撮像素子:1/5.66型(有効) MOS固体撮像素子」ということになるでしょうか。
最近のビデオカメラに使われるセンサーは、デジカメ用に設計された高画素センサーを流用している場合が多く、仕様表のセンサーサイズと有効センサーサイズが大きく違ってもやむを得ないところがあります。
私自身は、製品の情報としては、従来通りの記載方法によるセンサーサイズとレンズの焦点距離、写真モード・各動画モードでの換算焦点距離が明記されてさえいれば、有効センサーサイズの情報はさほど重要だとは思いません。しかし、仕様表のセンサーサイズと有効センサーサイズがあまりに大きく異なる場合は、その旨注記があるのが望ましいと思います。
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