Top > Works > 撮影機材ガイド 動画・基本編 (2014年4月6日掲載)

撮影機材ガイド 動画・基本編

これまでTwitterのほうでときどき機材関連のツイートを書き込んできましたが、このページでそれらの情報の一部をまとめてみました。

まずはテーマを動画(ビデオ)に絞って、使いこなし以前の、機種選びや機材選びの際に何かの手がかり足がかりになるかもしれない、ごくごく基本的なことについて書いています。

はじめに

現在、このジャンルで公開用のコンテンツを作られている方はそれほど多くはありませんが、いろいろな方からメールをいただいたり実際にお会いしてお話を聞いた範囲では、プライベートな形で撮影活動をされている方は結構いらっしゃるようです。もしかしたらこうした機材系の情報も少しは需要があるかも?と思い、作成しました。

しかしながら漫然とすべての方を対象に書くのは難しいため、かなり内容を絞り込ませていただいています。ここでは主に、パイ投げとか泥んことかメイクとかの撮影計画を考えているけどカメラ趣味がないので機材をどう選べばいいか全然わからないとか、とりあえず古いデジカメで撮影を始めてみたけど不満点があるので新しい機材も検討したいといったような、カメラについてそれほど詳しくない方に向けた内容を心掛けました。

私自身、もともとカメラ趣味があったわけではなく全然その方面の知識も関心もなかったのに、なんとなく、何か撮ってみたいなという漠然とした考えのほうが先にあって、結果的にカメラを使い始め、ある意味仕方なくいろいろ調べ始めて今に至っています。このジャンルで撮影を始めた方やこれから始めようとしている方にも、同様の方はいらっしゃるのではないかと思います。

とは言え、私が実際に使ったことのあるカメラの種類は限られる上に現在使用中の機種はもう新品では販売されていませんし、新機種についても家電店の店頭で少し触った程度での印象やネット上のレビューだけでは、これがいいかも?くらいのことは言えても、太鼓判を押すような推薦はできません。そのため、このメーカーのこの機種がお奨めという具体的な話ではなく、カタログをどう見ればいいのかとか、カメラのどの部分に注目するのがいいのかとか、あると便利な機材のご紹介とか、本当にかなり基礎的な事柄しか書いていません。

そんなわけで、すでにある程度の知識をお持ちの方からすれば基本的すぎてそれほどお役に立つ情報は含まれていないと思いますし、あまりお詳しくない方にも、結局どれが良いのかはっきり書かれていない点で大してご参考にならないかもしれません。ただ、最後までお読みいただければ、すべての環境に合う万能の機種は存在せず、撮影環境や撮影者によって注目点や必要な機材が違ってくるということはご理解いただけるかと思います。

このページで前提としているのは、かなり特殊な撮影環境です。たとえば、カメラマン1人・モデルさん1人のパイ投げの撮影で、スペースは狭く、さほど明るくもないというような状況です。しかし特殊とはいえ、個人的にこういったジャンルの撮影を行おうとした場合には、ありがちな環境のようにも思います。私の経験も踏まえて書いていますので、そういった部分で僅かでもご参考になる部分がありましたら幸いです。

タイトルをとりあえず「動画・基本編」としていますが、「動画・応用編」や、「写真編」については未定です。

文中で特定の機種名を挙げている場合でも、それは積極的に推奨する意図ではなく、一例や具体例の提示に過ぎません。価格.com(カカクコム)のURLの引用が多いのは、価格.comは長期に渡って個々のページのURLを変更していない実績がありリンク切れになりにくいこと、さらに価格.comの各製品のページにはたいていメーカー公式の製品紹介ページへのリンクも記載されているからです。価格.comでのお買い物をお奨めしているわけではありませんし、アフィリエイトのリンクでもありませんので、それもまたご了承ください。

このページで扱うカメラの範囲

このページでは、ビデオカメラと、動画機能のあるコンパクトデジタルカメラ・レンズ交換式デジタルカメラを取り上げます。以下の文中では、ふつうのビデオカメラと区別する形で便宜的に、動画機能付きのコンパクトデジタルカメラを「コンデジ」、動画機能付きのレンズ交換式デジタルカメラを「デジタル一眼」と表記します。それぞれ、価格.comでは「ビデオカメラ」「デジタルカメラ」「デジタル一眼カメラ」というジャンルに掲載されている商品群です。

単に「ビデオカメラ」と表記した場合には、コンデジやデジタル一眼ではない普通のビデオカメラ、より具体的にはソニーパナソニック・キヤノンビクターの現行機種(またはここ数年の最近の機種)を指しています。家電店で普通に「ビデオカメラ」と言うと、たいていその4社の製品のことです。

「デジタルカメラ」と表記した場合にはコンデジとデジタル一眼をひとまとめにして指しているもの、単に「カメラ」とだけ表記した場合にはビデオカメラ・コンデジ・デジタル一眼全般を指すものとしてお読みいただければと思います。

コンデジ・デジタル一眼はビデオカメラ以上にメーカーや機種のバリエーションが豊富で、ビデオカメラほどには商品ジャンルとして画一的ではないのですが、このページではとりあえず国内主要メーカーによるコンデジ・デジタル一眼のうち「フルHD動画(1920x1080)の撮影に対応した機種」を念頭に置いて書いています。

ビデオカメラか、デジタルカメラか……使い勝手での比較

数年前までは動画を撮るための民生用(一般家庭向け)の機材といえば「ビデオカメラ」の一択でしたが、最近はデジタルカメラの動画機能が向上し、またスマートフォンやカメラ付きタブレットの登場もあって、選択肢が多様になってきました。画質については、ビデオカメラでもデジタルカメラでも、たいていの機種で実用上充分に綺麗なものが撮れるというのが実際だと思います。

一方で、動画を撮るということに関する総合的な使い勝手の良さという部分では、餅は餅屋というか、今でもビデオカメラがまだ一歩先んじています。たとえば、私自身がビデオカメラ・コンデジ・デジタル一眼を使ったり、またネットで様々なレビュー記事や実写サンプルを見てきた中で、デジタルカメラの動画機能にありがちと思われる気になる点を挙げてみます。

ここに挙げた点は、すべてのデジタルカメラに共通するというわけではけっしてありません。機種によっては動画機能を強く意識して設計されていて、これらの点を部分的に(またはすべて)クリアしている機種もありますし、中にはビデオカメラ以上の性能を実現しているものもあります。しかし、デジタルカメラでそういう機種を見つけようと思ったら製品に関する情報をいろいろ調べたり確認したりする必要があるのに対し、ビデオカメラの場合には初級機種でもこれらの点はほぼ問題ありません。

カメラやデジタルモノに強くてあれこれ調べた上での製品選びが全然苦にならない方はカメラ全般を幅広く選択肢に含めてじっくり検討されたらよいと思いますが、特にカメラにさほど詳しくない方やこだわりがない方は、動画を撮ることを第一の目的とする場合、現状では使い勝手の良さという点でビデオカメラを選ぶのが無難だと思います。三脚に固定して長回し(長時間撮影)するような用途や、屋外でイベントを動画撮影するような場合も、おおむねビデオカメラのほうが向いています。

ただしこれらは動画を第一の目的として、さらに使い勝手という観点でみた場合のことであって、他の評価軸に注目して選ぶ場合には、また違った結論になるかもしれません。当然ながら、写真が第一の目的で動画はときどき短いものを撮れればOK(写真がメインで動画はおまけ)という使い方の場合には、デジタルカメラのほうがいいと思います。

室内向きのカメラ

「そんなに広くなくてさほど明るくもないホテル室内でのプライベート撮影」みたいな撮影場所・シチュエーションを想定しますと、「暗いところでも綺麗に撮れて、狭いところでも構図の自由度が高いカメラ」が向いていると言えます。これをカメラの具体的な性能に置き換えますと、大雑把に言って、「イメージセンサーの感度が良くて、レンズの開放F値が明るく、焦点距離が広角側に強い機種」ということになります。以下、専門的になりすぎない程度に、順に見ていきます。

暗いところでも綺麗に

イメージセンサー

撮影の際、人間の目にとって充分な明るさでも、カメラにとっては実は光量が足りていないという環境があります。光量が足りないと、ノイズっぽい映像なります。夜景のように人間にとって暗いところだけでなく、一般庭のごく普通の室内や、曇天で太陽光が遮られている昼間の屋外などでも、カメラの性能によっては光量が足りない状況は起こりえます。以下のキャプチャ画像は縮小されているので少しわかりにくいですが、光量不足によるノイズっぽい画質の一例です。特に室内では、こうしたことが起こりがちです。

【写真】光量不足の例。ソニーHDR-HC1で、雨天時に撮影。
「泥んこ体験2006」より

カメラにはレンズから入る光を電気信号に変換するイメージセンサー(または「撮像素子」)と呼ばれる回路があり、室内の撮影には、少ない光量でもノイズを抑えた綺麗な電気信号に変換できるイメージセンサーを搭載したカメラが向いています。かなり細部を端折って厳密性に欠けた記述になりますが、そのような性能を得るには、センサーの面積が大きく、且つセンサーの画素数が適度な数に抑えられているほうがよいとされています。イメージセンサーのサイズや画素数は、仕様表にも掲載されています。

【参考図】一例として、パナソニックのビデオカメラのカタログから、センサーのサイズや画素数が掲載されている部分。

ビデオカメラもコンデジも室内は苦手

しかし、民生用のビデオカメラは小型軽量化を優先してそれほど大きなイメージセンサーを積んでおらず(だいたい1/6型〜1/3型程度)、さらに最近は高画素化の影響もあって、室内での撮影は必ずしも得意ではありません。コンデジの初級機〜中級機も状況は似たようなもので、イメージセンサーこそビデオカメラよりやや大きめのものが多いですが(だいたい1/2.3型以上)、かなり高画素化が進んでいますので、室内の動画撮影に強い機種は少ないと思います。

性能を詳しくみれば、ビデオカメラの中でも、たとえばセンサーが「1/6型」の機種より「1/3型」の機種のほうが感度が良く室内向きとか細かな違いは存在しています。ただ個人的には、ビデオカメラの機種間またはコンデジの機種間の微妙なセンサーサイズの違いを気にするよりは、今のビデオカメラ・コンデジは全般的にそんなに室内には強くないと割り切って、後述のように補助照明としてLEDライトを使用して充分な光量を確保するほう安上がりで現実的ではないかと思います。

ビデオカメラ・コンデジ各機種間のそういった部分での性能差が気になる場合は、価格.comのクチコミ掲示板などにレビューや性能に関する議論が書き込まれおり、ある程度は参考になります。なお、たいていの家電店の店内は一般家庭の部屋に比べて非常に明るく、充分な光量がある環境ですので、室内画質の確認には向かない場合があります。店で試し撮りしたときと家で使ってみた場合の印象が違うならば、撮影環境の明るさの違いによるものかもしれません。

デジタル一眼や一部のコンデジ上級機では

一方で、ビデオカメラに比べると室内に強いと言えるのが、デジタル一眼や、1型以上の大型センサーを搭載した一部のコンデジ上級機(たとえばソニーDSC-RX100M2DSC-RX10など)です。ビデオカメラのセンサーが1/6型(2.6×1.9mmほど?)〜1/3型(実寸4.8×3.6mmほど)なのに比較して、デジタル一眼と一部のコンデジ上級機は、1型(13mm×8.8mmほど)〜フルサイズ(36×24mm)といった大きなセンサーを搭載しています。単純に面積で比べると、数倍(1/3型と1型の比較)〜百数十倍(1/6型とフルサイズの比較)もの違いがあります。

また例外的なビデオカメラとして、最近ソニーから発表されたFDR-AX100HDR-CX900があります。これら2機種は従来のビデオカメラより大幅に大きな1型センサーを使っていて、こちらも室内の画質では有利と思われます。

【参考図】イメージセンサーのサイズの比較画像。この手の話題で出てくる定番の表です。

ご参考まで、以下の2枚は、少し薄暗くした部屋で補助照明を使わずに動画を撮影し、そこからキャプチャした静止画の一部範囲をトリミングしたものです。コンデジで撮ったほうは光量不足でノイズっぽいのに対し、同じ光量でも、デジタル一眼のほうはレンズによってはこれくらいの映り方で撮ることが可能です。(しかしコンデジのほうも、後ほど掲載の画像のように、安価なLEDライトを使うだけでノイズを抑えてもっと綺麗に撮れます。)

室内の蛍光灯を少し薄暗くして、立てたVHSパッケージを、
【左】キヤノンのコンデジPowerShot SX280 HSで動画撮影、キャプチャ画像をトリミング
【右】パナソニックのデジタル一眼DMC-GH2に明るいレンズを付けて動画撮影、キャプチャ画像をトリミング

動画目的でデジタル一眼や一部のコンデジ上級機が選択肢になるとすれば、たとえば以下のような、それらのカメラでなければ代わりがきかない明瞭なニーズや理由がある場合でしょうか。

ただし、デジタル一眼・コンデジ上級機を選ぶならば、前の項目で挙げた総合的な使い勝手の良さという部分については、機種によって程度の差はありますが、妥協が必要になると思います。現在のビデオカメラの完成度は小型センサーだからこそ実現している側面があり、センサーが大幅に大型化したAX100とCX900についてもビデオカメラとしての操作性の良さや使いやすさが犠牲になっているところがないか、確認を要します(たとえば価格.comのCX900のユーザーレビューには従来機よりオートフォーカスのスピードが遅い、ズームが遅いとの指摘があります)。

特にデジタル一眼の場合にはメーカーによって得手不得手やクセがあり、ビデオカメラ以上に仕様の違い方が多様です。機種選びにはまた違った見方も必要になりますので、それについては今後機会があれば改めて取り上げたいと思います。(【4月19日追記】「デジタル一眼動画の基本情報編」を掲載しました。)

繰り返しになりますが、後述のとおりLEDライトを使うだけでビデオカメラでもある程度ノイズを抑えて撮影できますので、デジタル一眼などを積極的に必要とする理由がなければ、動画撮影という点ではビデオカメラのほうが敷居が低くまた使いやすいと思います。

もう一点、暗いところの画質には「レンズの明るさ」も影響しますが、それについては記述を簡便にする都合上、以下の項目のうしろに書いています。

狭いところでも構図を自由に

ビデオカメラやコンデジでレンズをズーム操作する際、めいっぱい広い範囲を撮る側を広角側、めいっぱい遠いところを撮る側を望遠側と呼びます。室内では、広角側にしたときになるべく広い範囲が映る機種のほうが向いています。

カメラに映る範囲(画角、構図)は被写体とカメラの距離を調整することでも変えられますが、あまり広くない室内ではカメラのセッティング場所すら限定される場合があります。ほぼ顔のクローズアップのみしか撮らないというのであれば別ですが、一つの画面に全身あるいは体の広い範囲を収めたい場合には、広角側でどれくらい広く映せるかが重要になります。

これも目安だけ書きますと、ビデオカメラ・コンデジの仕様表の「レンズ」欄にある「焦点距離(35mm判換算) f=○○〜△△mm」みたいな部分の数字が、広角側でどれくらいの広い範囲を映せて、望遠側でどれくらいのクローズアップを映せるのか、それぞれの限界を示しています。ビデオカメラの場合、○○の部分が30よりも小さい数字であれば、比較的、広角側にも強い機種です。26とか24という数字だと、広角側でさらに広い範囲を映せます。現行の全機種を確認したわけではありませんが、ビデオカメラだといちばん広い機種で26mm前後の数字になっていると思います。40mm以上だと、あまり広角側が強いとは言えません。

【参考図】一例として、パナソニックのビデオカメラのカタログから、レンズの焦点距離などが掲載されている部分。

コンデジの場合、24mmや20mmといった機種もありますが、動画撮影時には写真のときよりも少し画角が狭くなるタイプの機種(たとえば写真モードでは24mmスタートだけど動画モードでは30mmになるなど)もあり、確認を要します。

少し前までのビデオカメラは、広角側が35mm判換算で40mm前後という機種が主流でしたが、最近は広角側が広くなるものが増え、その点では室内向きのものが増えてきました。私が以前使っていた機種は広角が43mmスタートで、特にモデルさんが2人いる場合はめいっぱい引いてもやや窮屈な感じがして、カメラの位置どりに苦心しました。これが30mmになると自由度が上がり、さらに24mmになるとだいぶ広く感じます。

【左】広角43mmスタートのビデオカメラ使用。広角側で上半身がせいいっぱい。
【右】モデルさんとの距離は左のパイ投げのときと同じくらいで、広角24mmのレンズ使用。
「パイ投げ体験その5 奔放編」「ペイント体験その12 増粘編」より

望遠側の数字については、室内撮影の場合にはさほど気にする必要はありません。特にビデオカメラは光学10倍以上のズームレンズを備えた機種が大半で、室内では充分だと思います。コンデジの場合、光学3倍〜5倍ズームくらいの機種もあり、そういった機種では望遠側の数字が自分の撮影の用途や目的に足りているかどうかが要確認となります。目安としては、被写体とカメラの距離が1メートルくらいで顔をめいっぱいクローズアップで映したい場合、仕様表「焦点距離(35mm判換算) f=○○〜△△mm」の部分で言えば、△△のところはおおよそ100mm以上の数字がほしいところです。

なお、仕様表のレンズの欄には「焦点距離」と「焦点距離(35mm判換算)」という2種類が載っていると思いますが、目安として気にするのはとりあえず後者のほうのみで構いません。

デジタル一眼の場合、レンズ交換が可能で広角側から望遠側まで様々な選択肢があり、ビデオカメラ・コンデジよりもその点での自由度は高くなります。もちろん、レンズを増やすにはそのぶん費用が必要となります。

レンズの「明るさ」

カメラのレンズには、レンズを通る光量の多い少ないを示す「開放F値」と呼ばれる指標があります。光量が少ない環境では、先ほどのイメージセンサーの性能に加えて、多くの光を通せるレンズを使っているカメラのほうが、ノイズを抑えて撮影できます。「開放F値」が小さい値になるほどそのレンズが多くの光量を通せることを示していて、そうしたレンズを一般に「明るいレンズ」・「レンズが明るい」などと表現します。逆に大きい値になると、相対的に「暗いレンズ」ということになります。

【参考図】一例として、パナソニックのビデオカメラのカタログから、レンズの開放F値が掲載されている部分。焦点距離を示す「f=○○mm」とは別物です。

撮影時、光量が足りないぶんは映像信号の電気的な増幅により補うので(ビデオカメラでは「ゲインアップ」、デジタルカメラでは「ISO感度を上げる」)、必ずしも実際に撮れる映像まで暗くなるわけではありませんが、そうした増幅をすればするほど、映像はノイズっぽくなっていきます。増幅が少なくて済めばそのぶんノイズを抑えられますので、そのためにはより多くの光量を取り込める「明るいレンズ」のほうが有利という理屈です。

ビデオカメラやコンデジなどのズームレンズはたいてい焦点距離によって開放F値が変わるタイプのレンズです。先ほどの参考図の「F1.8〜F3.6」というのは、広角側の開放F値がF1.8、望遠側はF3.6であることを意味しています。ビデオカメラの場合、広角側の開放F値は初級機種も含めF1.8くらいの明るいものが多いようです。一方、コンデジの場合、広角側の開放F値はF3.5くらいのものが多く、F2を下回るような機種は、中級機〜上級機に限られています。

総じて、ビデオカメラのほうが明るいレンズを採用しています。ただ、その点でビデオカメラとコンデジで実際にどれだけの違いが出るのか、調べたことも実機で比較したこともないため、ここでは両ジャンルの仕様上の傾向としてそういう違いがあると書くに留めておきます。個人的には、ビデオカメラ・コンデジの場合、レンズの開放F値の細かな違いを気にするより、これもまたLEDライトで光量を補うのが安上がりだと思います。

屋外で撮る

屋外のお祭り・イベントや、あるいは素材や撮りたい内容によっては屋外での撮影もありえます。そうした撮影をメインにしている方もおられるかと思います。

望遠に強いカメラ

屋外の場合、室内よりもモデルさんとカメラの距離に自由が利きますし、むしろ被写体までの距離が遠いこともあります。その場合、望遠側に強い機種が向いています。

最近はビデオカメラでもコンデジでも光学30倍とか60倍とかに対応した機種が登場していますが(ソニーHDR-CX420、パナソニックHC-V550M、パナソニックDMC-FZ70など)、たいていの状況では光学20倍もあれば充分のような気がします。なお、カタログ上には「光学○○倍ズーム」の他に「デジタル△△倍ズーム」といった表記もありますが、後者はレンズのズーム性能を示すものではありませんので、とりあえずは気にしなくて構いません。

前の項目で書いたようにデジタル一眼はレンズ交換が可能ですので、望遠レンズの使用により対応できます。

手ぶれ補正

カメラを手持ちして撮影する場合には、「手ぶれ補正」に強い機種が向いています。手ぶれ補正とは、カメラを手持ち撮影して手がぶれたときの不安定な映像を補正し安定した映像にする仕組みのことです。室内でも手持ち撮影をするなら手ぶれ補正が役立ちますが、ズームアップするほど手ブレ補正の必要性がより高まりますので、被写体まで距離があるような屋外での撮影時にはより重視される要素となります。

手ぶれ補正は大半のビデオカメラに搭載されていますが、その効き目は使われている技術によって強弱があります。そうした中で、最近のソニーのビデオカメラに搭載されている「空間光学式手ブレ補正」はたいへん強力との評判で(たとえばAV Watchのソニー「HDR-PJ760V」レビューなど)、私もそれにより撮影された屋外イベントの映像を見せていただいたことがありますが、手持ち撮影なのに映像がたいへん安定していました。このタイプの手ブレ補正はセンサーが小さくレンズ一体型のビデオカメラだからこそ実現できている技術なので、デジタル一眼にはないアドバンテージになります。

ただし、ビデオカメラで10倍を大きく超えるようなズーム域になってくると、カメラを慎重に構えても手ぶれ補正だけで安定させることは難しく、三脚を使用する必要性が出てくると思います。カメラを固定させるだけでなく、高いズーム倍率のまま映像を乱れさせることなくカメラをスムーズに動かしたい場合には、後述のビデオ用三脚が必要です。

あると便利な機材

撮影を補助する、あったら便利な機材をいくつか挙げておきます。

照明

ここでは、映像がノイズっぽくならないだけの最低限の明るさを確保するために使う補助的な照明についてごく簡単に書いています。充分な光量を確保した上で被写体をより効果的に見せたり色の正確性にも注意を払うような本格的な照明技術については、私自身が不勉強ですので取り上げることができません。そういった方面については専門のサイトや書籍をお調べいただければと思います。

比較的手軽で安価な補助照明は、LEDライトです。小さなLEDの球が120〜160個程度敷き詰められているタイプの製品であれば、そこそこの明るさを得られます(Amazon「LEDライト カメラ」で検索、160灯タイプで実売価格5000円前後)。以前のハロゲンランプを使ったビデオライトに比べると、被写体との距離が遠いと光が届きにくいという弱点はありますが、ライトの表面が全然熱くならないという大きな利点があります。

【写真】キヤノンPowerShot SX280 HSにLEDライトCN-126Nを装着。ライトは消灯状態です。

以下は、部屋の蛍光灯の調光を少し暗くして、LEDライトなしとLEDライト点灯の状態で撮った動画を、キャプチャ画像で比較したものです。LEDライトはCN-126NというLEDの球が126個のタイプの製品です。カメラはキヤノンのコンデジPowerShot SX280 HS、被写体まで90cmくらいの距離で、フルオートで撮影しています。ビデオカメラやコンデジには厳しい少々暗めのところでも、LEDライトの点灯だけでこれだけ違ってきます。

LEDライトは、通常、汎用タイプのアクセサリーシューに装着しますが、ビデオカメラの場合にはシューの形状が各メーカーの独自仕様になっていたり、コンデジの場合にはそもそもシューがない機種が多く、以下のようなシューアダプターがあると便利です。先ほどの写真にあるSX280 HSの装着例も、シューアダプターを利用しています。ビデオカメラの一部機種やデジタル一眼は汎用タイプのシューを採用しており、そのまま装着できます。LEDライトはたいてい乾電池駆動なので、エネループなど充電式乾電池で運用するのがリーズナブルだと思います。

【左】シューアダプター、ソニーVCT-55L。折り畳んだ状態。同様の製品は他にもあります。
【右】カメラに汎用タイプのシューがある場合は、シューアダプターを介さず直接装着できます。

三脚

カメラを固定して撮影したい場合に必要となるのが三脚です。手ブレを防げる点でも、あると便利です。とりあえずカメラを一点に固定できさえすればOKという場合には耐荷重(載せられる重量)・脚を伸ばしたときの高さ・折り畳んだときのサイズ・重量・価格等で探している条件に合う製品を選べばいいのですが、固定した上で滑らかなパン(カメラを左右に振る)やティルト(上下に振る)をしたい場合には、「ビデオ用」を謳う三脚が必要になります(メーカーはいろいろありますが、たとえばベルボンのビデオカメラ用三脚など)。

ビデオ用の三脚は、カメラを上下左右に振っても急激に動きすぎないよう適度な粘り気によって滑らかに動くように作られています。それに対して、製品名や説明に「ビデオ用」という記述がない三脚の場合、基本的には写真撮影を前提に作られており、撮影しつつ滑らかにカメラを振る用途には向いていません。ただしビデオ用の三脚は機構が複雑になることから価格が高くなりがちで、より滑らかな操作ができる本格的なものほど、高価になっていきます。

現状、私はビデオ用の三脚でもっとも簡易的なタイプのものを使用していますが、実際には単なる固定のためだけに使う場面が多く、カメラを振る場合には手持ちで撮影することもあります。具体的な製品例やその使いこなしについてはまったく詳しくありませんので、ここでは三脚にもビデオ向けのものがあるということのご紹介に留めておきます。カメラを固定してフリーハンドになることが主な目的でカメラをあまり動かさないのであれば、ビデオ用でなくても用は足りると思いますが、使っていて不満を感じる部分が出てくるようなら、ビデオ用三脚の出番だと思います。

三脚は、一部の安価な製品を除くと、伸び縮みする脚の部分とカメラを載せる「雲台」の部分が取り外しできる作りになっていて、雲台部分のみでも入手可能です(ベルボンのビデオカメラ用雲台など)。ビデオ用三脚は、この雲台の部分がビデオ向けになっています。すでに三脚がある場合は、その脚の部分と、ビデオ用雲台を組み合わせて使うこともできます。

三脚の脚を伸ばしてセッティングするとそこそこスペースを占めるため、人出の多いイベントなど、三脚を使いにくい撮影環境もあります。その場合、一脚という選択肢もあります(ベルボンの一脚など)。一脚ではカメラから手を離せず、三脚ほどには固定できませんが、少なくとも上下の手ブレは抑えやすくなります。

外付けマイク

屋外での撮影時に風が強いときなどに、ウィンドジャマー(風防)をかぶせた外付けマイクを使用すると、風切りノイズをある程度は抑えることができます。

これまた現状では残念ながら私はあまり音声を重視した撮影ができていませんので、音声収録に関する技術的なノウハウは外部サイトでお調べいただければと思います。

【写真】使用例。キヤノンのビデオカメラに、専用の外付けマイクを装着しています。
「泥んこ体験その13 2010秋」より。

外付けモニター

これは前記3つの項目に比べると、もしかしたら必要性が低いかもしれません。たとえばカメラマン1人・モデルさん1人でパイ投げやメイクの撮影をして、ビデオカメラは三脚に固定、カメラマンがビデオカメラよりも前側にまわってモデルさんにパイ投げしたりメイクしたりするような状況を想定してみます。

ビデオカメラの場合、ほとんどの機種が液晶画面を180度回転させられるバリアングル式になっているため、液晶画面をレンズ側に回転させれば、被写体が画面に収まっているかどうかや投げ手の映り方などの構図を横目で確認しつつ、パイを投げたりメイクしたりすることができます。

たいていはバリアングル液晶で事足りると思いますが、ボディの液晶画面が開く側の反対側にカメラマンが位置取りせざるをえない場合などは、液晶画面を180度回転させても確認しずらいことがあります。こういったときに役立つのが小型の外付けモニターです。

撮影中にカメラの液晶画面に映っている映像(=撮影中の映像)をカメラの映像出力端子からを同時的に出力することをスルー出力と言いますが、ビデオカメラではたいていの機種でHDMIまたはアナログコンポジット(一般的な端っこが黄色い映像ケーブル)によるスルー出力が可能です。このスルー出力を外付けモニターに接続してカメラマンから見やすい位置に置くことで、構図を確認しつつ素材を扱ったりメイクしたりしやすくなります。さらにリモコン対応のカメラの場合、離れたところからでもズーム操作や録画開始・停止の操作ができます。

過去に外部モニターを何度か使ったことがありますが、最近は荷物量の都合で使用できていません。また、以前ビデオカメラと組み合わせて使っていた外部モニターはコンポジット接続のみが可能なのに対し、現在メインで使っているカメラがHDMIのスルー出力可・コンポジットは不可という仕様のため、改めて安価なHDMIの小型モニターを検討していたような状況です。以下の写真は実際の投入例ではないですが、接続のイメージとして掲載しておきます(実際に使ったときは、ビデオカメラと繋げていました)。カメラの液晶画面が見えない位置からでも映っている範囲を確認できることがおわかりいただけるかと思います。

【左】接続例。右側のカメラのスルー出力が、左側の外部モニターに映っています。
【右】外部モニターは2008年頃に中古で入手したWGO-25という型番のポータブルテレビです。当時ヤフオクで多数販売されていました。

外付けモニターは、ピントや色を正確に確認するために使われることがありますが、そうした用途はここでは取り上げていません。その目的の場合には、カメラの液晶画面よりもパネル解像度の高い本格的なカメラ用外部モニターが必要となります。以下、とりあえず構図さえ確認できればOKという用途に絞って書いています。

カメラ用外部モニターとその代用品

カメラ用の外付けモニターは、最近HDMI対応の製品が様々なメーカーから発売されるようになり、安いものだと1万円台後半くらいからあります(たとえばサンコーのHDMI対応5インチ液晶モニターHDM5LCD5など)。

代用品としては、車載用オンダッシュモニターも比較的安価です(Amazonにて「HDMI オンダッシュモニター」で検索)。車載用製品は電源も車内用となっていて特殊ですので、室内で使うには家庭用電源に接続可能にするアダプタが必要です(Amazon「バル(BAL) 家庭用コンセントでDC12Vアクセサリーソケット用機器」など)。

【写真】HDMI接続に対応した車載用オンダッシュモニター。

もっと安価な選択肢としては、コンポジット接続になりますが、外部入力端子付きのポータブルテレビという選択肢もあります(たとえばゾックスのDS-TV70i300など、Amazon「バッテリー内蔵型 7インチ液晶ワンセグ専用テレビ」)。コンポジットでの接続の場合、カメラ側の出力端子と外部モニター側の入力端子いずれも特殊な専用端子になっている場合が多く、カメラとモニターに付属する専用ケーブル同士をつなげることになりますが、先ほどの接続例の写真中央に写っているようにコンポジットケーブルの中継アダプタで繋ぐことで接続できます。

カメラ用ではなくポータブルテレビや車載用モニターから安価な代用品を探す場合、バッテリー駆動なのか電源接続が必要なのか、接続はHDMIなのかコンポジットなのかなど、仕様をよく確認する必要があります。モニターを自由な角度で置くには、小型三脚に載せるために、三脚穴があったほうが便利です。カメラ用の製品であれば三脚穴は当たり前の仕様ですが、ポータブルテレビや車載モニターではそうとは限りません。上で挙げたゾックスのポータブルテレビについては8インチのタイプ(DS-ITV800)の実物を見たことがありますが、モニター下部に三脚穴があり、実際に三脚に取り付け可能であることを確認しています。

またカメラ側についても、そもそもスルー出力が可能なのかどうか、可能な場合もHDMI・コンポジット両方OKなのかどちらか片方なのか、仕様を確認する必要があります。

ホテルのテレビ?

これは少し特殊な選択肢ですが、たとえばホテルでのプライベート撮影の場合、テレビの置いてある位置によっては、スルー出力をテレビの外部入力に接続することによって外部モニターとして利用できることもあります。当然、初めての部屋だったりすると都合の良いところにテレビがあるとは限りませんので、例外的な方法です。

【左】デジタルカメラの写真です。背後のテレビをビデオカメラの外部モニターとして接続しています。
【中】同じシーンの、ビデオカメラからのキャプチャ。ビデオにはテレビが入らないよう撮っています。
【右】外部モニターの画面をそのビデオカメラ自身で撮ってしまうと、画面の中が無限ループします。
※サイト未掲載の2004年頃の撮影より。

コンデジと外部モニター

コンデジの場合、液晶画面が背面に固定されている機種が大半を占めます。最近は「自分撮り」機能を売りに180度のバリアングルやチルトに対応したものが出始めましたが、まだ一部の機種に限られます。また、映像のスルー出力にも対応していない機種が多く、それらは外部モニターも使用できません(コンデジの場合、少し古めの機種のほうが却ってスルー出力に対応していたりします)。液晶が背面固定で且つ映像のスルー出力不可の機種は、液晶画面が見えない位置から構図を確認する方法がないということになります。

デジタル一眼の場合には、バリアングル・チルト液晶を装備してスルー出力も可能な機種が多数あります。

ビデオカメラは初級機種でもほとんどバリアングル液晶を装備しており、先述のようにスルー出力もたいていの機種で対応しているという点は、デジタルカメラに対するアドバンテージの一つかもしれません。

将来的にはNFCとWi-Fi

最近は、NFCと呼ばれる無線通信技術やWi-Fiを利用して、スマートフォンやタブレットの画面で撮影中のカメラの液晶画面を確認しつつ遠隔操作できる機種がビデオカメラ・コンデジ・デジタル一眼で登場し始めています(パナソニックHC-W850M・V750M「Wi-Fi機能・リモート操作」DMC-GX7など)。今のところ一部の機種に限られますが、今後普及が進めば、カメラとカメラマンの位置関係に左右されずに構図を確認したりリモート操作するもっとも簡便な方法になると思います。無線のため映像ケーブルの配線が不要なのも魅力的です。

また、ここでは詳しく取り上げませんでしたが、遠隔操作できる電動雲台と組み合わせれば、離れた場所からカメラをパンやティルトすることも可能です。パナソニックが自社製品用の「リモートパンチルター」(型番:VW-CTR1-K)というオプション品をラインナップしていますが、探せば安価な代用品があるかもしれません。

素材がついたり濡れたりしても壊れないタフなカメラ

防水・防塵性能を備えたカメラを使うと、素材がカメラに派手に飛び散っても気にすることなく撮影を続けられますし、自分の手がよごれた状態でも操作ができます。防水性能とは水の侵入を防ぐ性能を、防塵性能とは砂塵や埃などの侵入を防ぐ性能を指しています。

防水・防塵性能を最優先に選ぶと、他の部分の使い勝手や性能については妥協が必要になりますが、それでも最近は充分に高画質に撮れる製品が出てきているようです。

最近の製品から…

この類のカメラはまだ使用したことがなく、実践的な情報は持っていません。以前検討したことがある機種や、最近AV機器関係のニュースサイトで見かけた中から、ごく簡単に一部の機種を列挙しておきますと、ビデオカメラでは、ソニーHDR-GW66V、パナソニックHX-WA30、同HX-WA3、ビクターGZ‐RX130など。コンデジでは、オリンパスTG-2、同TG-850など。デジタル一眼では、ニコンNikon 1 AW1などがあります。

上記の機種はいずれもカタログの説明や仕様表に防水・防塵それぞれについて「JIS/IEC保護等級○○級相当」といった記述があり、工業規格の一定の基準に従って防水・防塵性能が保証されています。

当然ながら、防水・防塵性能があるカメラでも、不透明の素材がレンズ部分に付着したら光が遮られるため、撮影のためには最低限レンズ部分を拭く必要はあります。また、水・泥・食材系の素材についてはどんな付き方をしても洗い流せると思いますが、塗料については、塗料の種類とカメラ表面のコーティングとの相性によってはもしかしたら塗料が落ちにくいことがあるかもしれません。この点は実際に使用する中で試していくしかないと思います。以下は絵の具が付着したコンデジの一例で、この絵の具は肌に付いても簡単に落とせる種類なのですが、このカメラの表面から綺麗に剥がすのはなかなか手間がかかりそうです。

デジタル一眼の「防塵防滴」

一方、デジタル一眼のボディやレンズなどで「防塵防滴」といった表現をしている製品がありますが、それらはメーカーが独自の基準で「少々水がかかったり砂塵をかぶったりした程度では大丈夫なように作ってますよ」くらいの性能を商品の特長として謳ったもので、「JIS/IEC保護等級○○級相当」のような客観的な基準によって規定されているわけではありません。これは、レンズ交換式で密閉が難しいというデジタル一眼の構造上、完全な防水・防塵性能を保証することが難しいためだそうです。こうしたことから、デジタル一眼における「防塵防滴」は、万全の防水・防塵性能を意味するものではありません。例外は上にも挙げたニコンのNikon 1 AW1で、特定のレンズとの組み合わせで「JIS/IEC保護等級」による防水・防塵性能が保証されています。

ウェアラブルカメラ

最近は「GoPro」をはじめ、体に装着してスポーツなどの迫力ある映像を撮るタイプの小型のカメラ(ウェアラブルカメラ)も登場しています。こうしたものにも耐衝撃性能や防水防塵性能を備えた製品があり、サブカメラとしてカメラマンの体に付けたり、モデルさんに装着してもらうと、面白い映像が撮れるかもしれません。

体に装着してハンズフリーで操作しない前提で作られているため、レンズがズームのできない単焦点レンズになっているか、できてもズーム域が狭いものが多く、普通のビデオカメラとはだいぶ作りが違っています。明確に用途と目的を選ぶカメラです。

普通のカメラも意外にタフ?

防水・防塵性能を売りにしているのではない普通のカメラでも、製品によってはわりとタフにできているというか、少々素材がかかる程度では大丈夫だったりもするようです。

あるMessyのイベントでボディとレンズに溶けかけの生クリームをかぶったデジタル一眼を見かけましたが、お使いの方は「泥んこイベントでもさんざんよごれているがこの程度では大丈夫」というような意味合いのことをおっしゃっていました。先ほど例として挙げた写真のコンデジも、電源が入り、まだ撮影可能です。

もちろん、この点は製品や素材の種類とそのかかり方にもよると思いますので、無茶な使い方はしないほうが無難だと思います。

その他、あまり気にしなくてもいいこと

一昔前まで、ビデオカメラは「規格」に縛られる側面が強く、規格の種類(DV、HDV、AVCHD)や記録メディア(テープ、HDD、DVD、メモリーカード)はカメラ選びの際にもっとも気にせざるをえない点でした。しかし最近は記録メディアがSDカードや内蔵メモリーなどほぼメモリー系の一択になり、PCへ取り込んでPC上で保存・編集・配布するという流れが一般的になっています。ビデオカメラとデジタルカメラの垣根は先述のような細かな操作性や使い勝手の違いを除くとほぼなくなりつつあり、規格はあまり気にしなくてよい事柄になりました。一見いろいろあるように思える記録ファイル形式も、後述のように実は共通の技術を利用しています。

以前よりも重要ではなくなっていることではありますが、動画の記録形式に関連するいくつかの要素について、最後にごく簡単にまとめておきます。

動画の記録ファイル形式

動画の記録ファイル形式として「AVCHD」(拡張子はm2t、m2ts、mts)・「MP4」・「MOV」などいろいろありますが、最近の機種はAVCHDでもMP4でもMOVでもほぼすべてMPEG-4 AVC(別名「H.264」)という映像圧縮技術を利用しています。たとえるならお皿は違っても中の料理方法は一緒という感じで、この点に関しては違いを気にする必要はさほどありません。仕様表の動画機能の欄に「AVCHD」または「MPEG-4 AVC」または「H.264」という文字があれば、そのカメラの動画はたいていの動画編集ソフトで読み込みできます。

2013年にソニーが「XAVC S」というビデオカメラ向けの規格を発表しましたが(AV Watchの記事ソニーのプレスリリース)、これも圧縮技術としてMPEG-4 AVCを利用しています。

余談ながら、「MPEG-4 AVC」と「H.264」は同じ圧縮方式を指していますが、「MPEG-4 AVC」と後ろに何も付かない「MPEG-4」は本来は別物です。しかしネット上の文章では「MPEG-4 AVC」のことを指して単に「MPEG-4」と表記しているものがあったりしますので、ややこしさの一因にもなっています。上記のとおり、最近のビデオカメラ・デジタルカメラの動画はほぼ「MPEG-4 AVC」採用です。YouTubeの動画もMPEG-4 AVCでエンコードされています。

最近、「H.265」(別名「HEVC」)という次世代の圧縮方式が登場しましたが、現在のMPEG-4 AVCほどに普及するのはまだまだ先のことと思われますので、これもまた現時点でのカメラ選びの際には気にする必要はありません。

記録画素数

最近はビデオカメラのほとんどの機種とデジタルカメラの多くの機種がフルHD(1920x1080)の動画を撮影できます。ただし記録画素数=実際の解像度というわけでは全然なく、たとえば光量が足りないと、1920x1080で記録されていても実際にはそんなに精細に見えない動画になってしまいます。記録画素数ではなくそういった実際の精細さや解像度は、レンズやイメージセンサーの性能によっても大きく左右されます。

ごく最近は「4K」や「UHD」と呼ばれる4096x2160とか3840x2160で撮影できるビデオカメラ・デジタル一眼が登場し始めていますが、現時点ではまだ選択肢が限られます。

Blu-rayは最大1920x1080、DVDは720x480、ネット配信は1920x1080〜640x360くらいが主流ですので、当面は1920x1080で記録できる機種であればたいていの用途に足ります。ネット上での配布がメインであれば1280x720での撮影でも充分ですが、コンデジ・デジタル一眼で動画機能を重視している機種のほとんどは、1920x1080で撮影可能です。

ビットレート

画質を左右する要素の一つに、1秒あたりの記録情報量を示す「ビットレート」という数値があり、大まかには、同じ圧縮方式を採用しているならばビットレートが高いほうが高画質になります。記録ファイル形式がAVCHDの場合、規格の上限でビットレートが最大24Mbps(または28Mbps)に制限されますが、XAVC SやMP4・MOVを採用した機種の場合にはそれより高い50Mbpsなどのビットレートで記録できる機種があります(ソニーFDR-AX100HDR-CX900やパナソニックHC-W850MHC-V750Mなど)。

ビットレートが高いと、カメラや被写体の動きが激しい場合でもブロックノイズが少なく、有利となります。それ以外にも画質全般に好影響がありますが、ここではブロックノイズに絞って取り上げます。

以下はテレビ番組で圧縮方式はMPEG-2になりますが、ブロックノイズの出方の一例です。ビットレートを上げることで、これらのノイズを出にくくすることができます。

【左】動きが大きいため、顔の部分が微妙にモザイク状になっています。
【右】動きが少ない、ノイズのほぼないシーン。
(※2010年10月放送「飛び出せ科学くん」より)

【左】動きが激しいため、全体的にモザイク状のノイズが目立ちます。
【右】顔の部分は綺麗ですが、手前の動きの激しい手がほぼモザイク状態です。
(※2010年8月放送BS-TBS「大アマゾン孤高の民」より)

ただし上記画像は地上波のMPEG-2圧縮による少々極端な例で、カメラで採用されているMPEG-4 AVCの場合、もうちょっとマシです。それでも、たとえば小波がたつ池の水面や、風でさざめく万緑の木、舞い散る大量の花吹雪など、細かなものがランダムに動く絵柄はビットレートが足りないとブロックノイズが出やすく苦手とされています。

室内・カメラ固定・被写体一人であれば、24Mbpsでも充分で、それ以上のビットレートが必要となる場面は少ないかもしれません。逆に屋外の手持ち撮影で被写体も大勢いるような環境だと、50Mbpsなど高いビットレートの恩恵を受けやすいと思います。

また、ビットレートを高くすると、そのぶんファイルサイズも大きくなります。ビットレートが2倍になれば、動画の容量も2倍です。8Mbps(1秒あたり8メガビット)=1MBps(1秒あたり1メガバイト)ですので、○○Mbpsの○○を8で割って撮影時間の秒数を掛ければ、MB(メガバイト)でおおよその容量を把握できます。たとえばAVCHDで一般的な24Mbpsは1秒3MB、それで1時間撮影すれば3MBx3600秒=10800MB=約10〜11GBくらいのファイルサイズになります。50Mbpsで1時間撮影すると、その約2倍、22GBくらいの容量が必要です。ビットレートを抑えると、同じメモリー容量でもより長時間の撮影が可能になります。

フレームレート

フレームレートとは、動画の1秒間のコマ数を指します。主に1秒60コマ・30コマ・24コマの3種類があり、液晶テレビでテレビ番組を見る場合はたいてい1秒60コマ、YouTubeなど動画サイトの動画はたいてい1秒30コマか24コマです。映画やアニメは1秒24コマで制作されています。

カタログ上の表記では、60P・60i・30P・24Pとか、60fps・30fps・24fpsなどと書かれています。ちょっとややこしいのがAVCHD規格に含まれている「インターレース」という概念で、上記の「60i」の「i」は、インターレースを意味しています。インターレースはブラウン管時代に考えられた1秒60コマの映像の情報量をうまく削減する技法の一つですが(Wikipedia「インターレース」)、きちんと説明すると複雑なので、とりあえず1秒60コマには2種類あって、60iはそのうちの1つと考えておけばいいと思います。60Pのほうが60iより情報量が多く精細とされていますが、Blu-rayもDVDもフレームレートは60P非対応で60iしか収録できませんし、YouTubeに動画をアップロードすると60Pでも60iでも30Pに変換されてしまうため、カメラが60iまででも特に困る場面はありません。

ビデオカメラの場合、現行の全機種でフルHDでの1秒60コマ(60iのみか、または60i・60P両方)に対応しており、フレームレートは気にする必要はありません。

デジタルカメラの場合、60P・60iにも対応する機種と30Pまでの機種とに大別されます。テレビで見慣れている映像は1秒60コマですし、動きが激しい被写体には1秒60コマでの撮影のほうがスムーズな映像になりますが、日頃YouTubeで様々な動画を見ていて被写体の動きに特に違和感を感じなければ、1秒30コマでも充分だと思います(YouTubeにアップロードされたテレビ番組は30Pに変換されています)。編集ソフトで30P→60iや60P→60iの変換もできるので、30Pや60Pで撮影したものをDVDやBlu-rayの素材として使うことは可能です。

他に、1秒120コマや1秒240コマなど、60コマを超えるフレームレートに対応するカメラが一部にありますが(ビクターGC-P100やアップルiPhone 5sなど)、これはスーパースロー的な映像の撮影ができることを意味します(そうしたスローモーションの撮影を「ハイスピード撮影」とも言います)。1秒120コマで撮影して1秒30コマで再生すると、とても滑らかなスロー映像になるという仕組みです(たとえばYouTube「Slow Motion Pie Smashing」や、「Sony FS700 - Epic Slow Mo」の1分56秒過ぎなど、いずれもスーパースローのパイ投げ)。最初から1秒30コマで撮影して再生時にスローにした場合には、このような滑らかなスローにはなりません。

デジタルカメラでのAVCHD

AVCHDはもともとビデオカメラ用の規格でしたが、最近はコンデジ・デジタル一眼でも採用機種があります。一点だけ要注意なのは、コンデジ・デジタル一眼の中には、カタログの仕様表でAVCHDの「60i」に対応していると書かれていても、実質的には30Pまでしか対応していない機種がときどきあります。

見分け方としては、仕様表の記録画素数やフレームレートを記載した部分に「センサー出力30fps」のような記述が書き添えられていれば中身は30P(いわば擬似的な60i)、「センサー出力60fps」とあれば本物の60iです。

【参考図】一例として、ソニーILCE-5000の仕様表から、フレームレートに関する部分です。「60i」という表記はあるものの、「30fpsイメージセンサー出力」という注記があり、この機種の対応フレームレートは実質的には30Pまでであることを意味しています。

このようなややこしい事例があるのは、AVCHDの規格には当初「30P」が規定されていなかったためです。イメージセンサーが30Pまでしか対応していない機種がAVCHDを採用した場合、30Pを60iに変換して記録しています。実際にコマ数が増えるわけではなく、(これは厳密には正確な表現ではないのですが)記録時に同じコマを2つ続けることで60コマにしているだけなので、実質的には30Pです。

なお、AVCHD・「60P」対応のコンデジ・デジタル一眼の場合、センサー出力も60fpsですので、上記は気にする必要はありません。要注意なのは、「コンデジ・デジタル一眼のAVCHD採用機種」且つ「60Pには非対応で60iには対応となっている機種」の場合のみです。

おわりに

以上、かなり散漫で冗長な内容になってしまいました。あくまで手がかりのご提示に過ぎませんので、ご不明の部分、もっと詳しく知りたい部分は、検索等でお調べいただければと思います。なるべくわかりやすくするため、技術的に厳密ではない表現を使っているところがありますが、それらについてはご容赦ください。お気づきの点がありましたら、ご指摘いただけると参考になります。

撮影環境は様々で、ある人には気になる要素も、他の人には全然気にならないことがあります。たとえばプライベートな撮影でも、自宅なのかホテル利用なのか、自分自身も被写体となるのかそれとも相方やモデルさんだけを映すのか、あるいは車移動なのか電車と徒歩の移動なのか等々、環境や条件によって機材のどういった部分を重視するかは違ってくると思います。このページの情報では全然カバーできていない撮影環境もあると思います。

また、何も撮影をしていない段階では、自分にどういう機材が必要なのか具体的なイメージは持ちにくいかもしれません。その場合、とりあえず入門機を入手するという選択肢もありますが、個人的には、コンデジでもスマホでもとにかく今ある機材で撮り始めてみるのも一案だと思います。実際に撮影してみて、もし改善したいところが出てきたら、その段階で改めて新しい機材なり使いこなしなりを検討すれば、より状況に合った経済的な選択ができると思います。

ともあれ、何らかの形で、僅かでも参考材料となる部分がありましたら幸いです。

私もまだまだ知らないことばかりで、どのようなカメラでどのように撮影するのが自分の撮りたいものや撮影環境にうまく合っているのか、試しつつやっているような段階です。他にも撮影されている方々から、こういう機材を使っているとか、こういう使い方があるとか、いろいろとご教示いただければと思います。

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