Top > Specials > 干潟であった怖い話 2020 (2020年8月15日 Twitterから掲載)
Twitterのタイムラインに「#本当にあった怖い話」のタグがあったので思い出しました。もうだいぶ前で、無理をすれば合理的解釈の余地はあり、当事者でなければ大して怖くない類いの話だと思いますが、書いてみます…。
もう10年近く経ちますが、8月のお盆の少し前、O市(旧A町)の干潟体験場で撮影していたときに、モデルさんが体験しているのとは少し離れた場所で、たぶん10代後半~20代くらいと思われる女性の方が体験向きの軽装で一人で遊んでいるのを見かけました。顔こそ付けていませんが、首から下は既にだいぶドロドロで、優雅に満喫?している様子がなんとなく窺えました。
あれ、いつの間に入ったんだろう?と思いましたが、撮影に集中している間に他の体験者さんが来たことに気付かない、ということも過去に皆無ではなかったので、いつ遊び始めたのかという点はそこまで気になりませんでした。
しかし、この体験場は道の駅鹿島と違ってマイナーで、当時そこで撮影したときに遭遇する体験者といえば、泥好きのお仲間さんを除くと、地元の小さいお子さんのいる家族連れか、小学校低学年以下の子ども会か何かのグループ体験がほとんどでした。若い女性の方がしかも一人で遊んでいるのはまず見かけないので、そのことはとても印象に残りました。(ちなみに道の駅鹿島であれば、地域も年齢層ももっと幅広い一般の方が数多く体験しています。)
もしかしたら他にカメラマンがいて車に荷物を取りに行っているだけで、私たちと同じく撮影なのかな、と思ったりしましたが、少し経っても他に誰も来る様子もなく、じゃあもしかしたら女性の真性さん?と思いつつ、夕方の予定の終了時間が迫っていたのでモデルさんと私は体験場から引き揚げました。遠目に見てもその方が落ち着いてまったり楽しんでいる様子は堂に入ったもので、真性さんにせよ一般の方にせよ、とても素敵だと感じました。
モデルさんのシャワーを待ち、その間に私も着替えたり荷物をまとめたり帰りの準備をします。更衣室と体験場のあいだに小高い堤防道があり、車で来た体験者はその道の脇に駐車しますが、堤防上から体験場全体を見下ろせます。私は荷物の整理で車のある堤防上と男子更衣室のあいだを何度か行き来していましたが、先ほどの女性の方がまだ体験しているのが見えていた…気がします。気がする、というのは、このときは撮影の仕上がりや片付けのことに考えを取られていて、それほど意識的には体験場を見ていませんでした。
体験場の受付の建物は、体験場から少し離れた、堤防を下ったところにあり、私はいつも体験の終了後に、受付に寄って管理のおばちゃんに終わりましたと一声挨拶して帰るようにしてました。この日も受付に寄り、挨拶のついでに、まだ遊んでいる方がおられますよね?とおばちゃんに尋ねてみると、いえ、午後の体験はあなた方だけですよ、との返事。
そんなはずは、と思って、もう一度体験場を俯瞰できる堤防に戻ってみると、そのときには体験場には誰もいませんでした。モデルさんに、女子更衣室に他の方の荷物とかありましたよね?と尋ねると、モデルさん曰く、自分もちょっと気になったので出る前に確認したが更衣室の中にも周囲にも他に靴も荷物も何もなかった、とのこと。
ここに至って、ああ、お盆には早いけど、もしかしたら見ちゃったのかなぁ…と思いました。口には出しませんでしたが、モデルさんも同じことを察したのか、早く出発しましょう、とせかされました。(が、元の予定どおり、体験後のコメント撮りだけはさせていただきました。)
とは言え、O市の体験場で遊んだことがある方ならおわかりいただけると思いますが、受付を通さずに、且つ更衣室を利用せずに体験することも物理的には不可能ではありません。また、私とモデルさんがいったん堤防を離れてまた堤防に戻るまでにたぶん10分ほどは経っているので、その間に体験者がどこか更衣室以外に構えた体験の拠点に引き揚げてしまうのも、相当に無理がある推測とはいえ時間的には不可能ではありません。
人目を忍んで本来の体験時間外に体験する猛者の方のエピソードを聞いたことがあるので、その女性の方も見かけによらない超上級者だったと思えば、この日のことだけでは怪談とまでは言えない…と自分に言い聞かせて、そのことはそれで終わったはずでした。
同じ年の9月、また撮影で同じ体験場に行ったのですが、このときは当時よく体験場でたまたま一緒になることがあった、泥好きの男性のXさんと会いました。毎回、お会いすると、今シーズンは何回来たとかお互いに近況報告をするのですが、ふと、そういえば8月にこういうことがありましてね…という上記の話を、モデルさんの着替えを待ちがてら、どちらかというと笑い話めかして、Xさんに言いました。
すると、話が進むうちにXさんの表情が真面目になっていって、実は私も8月に…と言い出しました。そのお話を伺ってみると、Xさんは私の撮影のちょうど翌日に同じ体験場で一人で遊んで、その途中、私が見たのと同じような年頃の女性の方が一人で体験されているのを見かけた、ということでした。
Xさんも、とても珍しい光景ということで印象に残ったそうです。私と同じく、体験の様子に対して「優雅」という印象を持った、とも言っていました。てっきり、貴重な貴重な女性のお仲間さんかなと思ったけど、先方がこちらを意識している様子がまったくないため声をかける勇気までは出ません。せめて記念に、と思って、体験時に自撮りのために使っている防水デジカメで、背後の遠くにその女性の方が微妙に映り込むような角度と構図で、記憶では確かに2枚、自撮りしておいたそうです。そのときのXさんは飛行機の時間の都合で早めに引き揚げる必要があり、その女性を残して15時過ぎには干潟を出ました。
帰宅してパソコンにデジカメの写真を取り込んでみると、なぜか上記の2枚だけがデジカメに残っていない。おかしいな、と思いつつも、それほど機械に詳しいほうではなかったXさんは、現場でシャッターがちゃんと押せてなかったのかな、それとも何か他の不具合かな、惜しいことをした、くらいにしか思わなかったそうです。
というのは、Xさんは、私のように受付で他の体験者さんの有無を聞くことはなく、また男性一人での体験だったので女子更衣室については当然何も確認せずに帰ったので、女性の方がここで一人で体験とは珍しいな、くらいの捉え方で、別に不思議だとか不気味だとかは思っていなかった、とのことでした。私の話と突き合わせて初めて、じゃあ自分があのとき見たものは…という怖さを感じたそうです。
ダメ押しになってしまうことを予想しつつ、お互いその女性の方の雰囲気や服装などの特徴をさらに思い出しながら話してみると、完全に一致しました。Xさんからしんみりと、「これならhimajinさんの話を聞くんじゃなかった」と言われましたが、私も同じく、Xさんの話を聞くんじゃなかった、と思いました。
9月も半ばを過ぎると、日中は真夏並みに暑くても夕方にはぐっと涼しくなることがあり、8月に比べて日も短くなります。そのためこの時期の撮影後の夕方はシーズンの終わりが近づいているのを感じて少し寂しい気持ちになるのですが、この日はなおさらでした。
私が何らかの見間違いや記憶違いをしていて、実はお仲間さんあるいは一般の方の普通の体験だった、あるいは他の方の撮影だった、という可能性も考慮して、今まで書いていませんでしたが、もうじゅうぶんに年月が経って時効だろうと思うので書きました。幸いにも、その後は体験場でそういった経験はありません。
なお、その後まもなく、Xさんは結婚されて佐賀への遠征もままならなくなったそうで、長らくお会いしていません。あのときの女性は何だったのでしょうか?今となっては、Xさんが話を盛っていたことを願うばかりです。
おしまい
(※狭いジャンルで苗字やハンドルネームの頭文字からあの方かな?となってもご迷惑なので、Xさんとしました。もしXから始まるハンドルネームの実践派さんがおられても、上記とは無関係です。)