新春コラム 一般のMessyシーンをめぐる変化について振り返る

先日、Eテレで「平成ネット史」という番組が放送されていましたが、私もネットユーザーの一人として、懐かしいなとか、これは全然知らなかったなとか思いながら、ぼんやり見ていました。

ふと、このブログを開始して13年以上が経過しましたが、このあたりで一度、一般のMessyシーンの供給状況にまつわるその間の変化についてまとめるのも少し面白いかもしれないと思い、この記事を書いてみることにしました。

ふだんはなるべく番組情報以外の記事は書かないようにしているのですが、新年の特別企画のようなものとして、ご容赦いただければと思います。個別の番組シーンの新しい情報や画像などは特に含まれていませんので、ご興味のない方は読み飛ばしていただいて大丈夫です。

また、あくまで個人的な視点による私感に過ぎませんので、全然違った見方もあるかと思います。その点もどうかご容赦ください。

■2005年夏にはiPhoneもYouTubeもAKB48もまだなかった

このブログを始めた2005年頃は、パイ投げ・泥んこ・顔塗りなどいわゆるMessyシーンの供給源と言えば、それを嗜好として持つ人が同好の人々のために作った専門作品以外には、ほぼ一般のテレビ番組や映画の中から探すしかないという状況でした。

もちろん当時でも一般の方のホームページやブログに運動会の飴食いや何らかのイベントの写真・動画が掲載されていることがありましたが、絶対数としては今よりもはるかに少なかったと思います。

しかし、この13年のあいだにMessyシーンの供給源をめぐる文化的・技術的な状況は大きく変わったのではないかというのが、この記事の主旨となります。振り返ってみると、2005年8月には、iPhoneもYouTubeもAKB48も今のような形ではまだ存在していませんでした。

■個人的に印象に残った5つの変化

Messyシーンを取り巻く状況に関して、現実社会、ネット上とも大小様々な変化があったと思いますが、個人的に印象に残っているものとして、以下の5つの点を挙げてみます。

(1)誕生日などに顔面ケーキをするノリの普及

従来のパイ投げとは少し違うかもしれませんが、5~6年前あたりから、特に10~20代くらいの世代の方を中心に、誕生日や祝い事で仲の良い友達同士が顔面ケーキなどのサプライズを仕掛け合うという光景が増えているような気がします。SNSで検索をかければ、そうした報告や画像・動画は山のように出てきます。

そういった顔面ケーキ的なノリはそれ以前から一部に存在していましたが、近年、かなり一般化しているような印象があります。一般化というと言い過ぎかもしれませんが、2005年頃とは比べものにならないほど広まっているのは確かだと思います。携帯電話のことをケータイと呼ぶように、誕生日などに顔面に何かをぶつけることを「顔面」と呼んで、「顔面する」「顔面された」などの表現を見かけるまでになりました。

こうした流行は「Rの法則」でも取り上げられました(2016年1月10日の記事)。

(2)ハロウィンの仮装の定着と顔塗りする人の激増

2005年頃の日本では、ハロウィンはさほど一般に馴染みのあるイベントではなかったと思いますが、ここ数年で一気に、バレンタインデーと同じかそれを超えるくらいに、メジャーなイベントとして定着しました。

コスプレイヤーではない人でも様々な仮装をしてハロウィンのイベントを楽しんでいる様子を街中やネットで当たり前のように見かけるようになりました。

巨大な仮装イベントとしてのハロウィンという裾野が広まったことに伴い、顔塗りして何かに変身する人の数も激増したような気がします。もちろん、ハロウィンで仮装する人、さらには仮装の中でも全塗りメイクまでする人は全人口から見ればごく一部だとは思いますが、これもまた以前に比べると、比較にならないほど増えているのは確かだと思います。

このブログを「ハロウィン」で過去記事検索してみると、2014年頃から記事が急増しています。

(3)動画配信やユーチューバー文化の定着

ここ10年ほどでネットでの動画配信文化がすっかり普及したように思います。技術的・ネット環境的に有名人ではない一般の方でも気軽に動画配信できるようになり、特にここ数年で日々おもしろ動画やノウハウ動画をアップロードするユーチューバー(YouTuber)の文化が定着、動画のネタとして顔塗り・飴食いなどもよく見かけるようになりました。広告収入を目的とせずに軽い遊びのノリでInstagramなどから配信することもごく一般的になっています(先日の「ZIP!」の記事など)。

面白系の動画を投稿するチャンネルだけでなく、綺麗系のメイクのノウハウ動画を発信するチャンネルですら、ハロウィンの時期には顔塗りの仮装メイク動画を掲載していたりします。

女性向けファッション雑誌もYouTubeに公式チャンネルを持つようになり、若者向けの雑誌の場合には、バラエティな企画の動画を載せるまでになっています。

(4)Amazonプライム、Netflix、Hulu、AbemaTVなど、動画配信サービス・ネット放送局の普及

2005年頃には、地上波のテレビ局以外である程度の予算での番組制作を期待できるメディアといえばCS放送(スカパー!など)くらいしかなかったわけですが、これもここ数年のAmazonプライム、Netflix、Huluなど有料動画配信サービスや、AbemaTVなどネット放送局の登場と普及で、大きく状況が変わりつつあります。

特にAmazonプライムやAbemaTVはそこそこ大きな予算規模でバラエティ番組を制作しているようで(過去記事検索「AbemaTV」)、今後はさらにそういった番組からのシーンが増えていくのかもしれません。

(5)AKBのおかげで若手アイドルは体を張るものになった?

この項目のみテレビシーンに関する変化で、そういう傾向ができたと言い切っていいのかどうか自信がありませんが、AKB48及びその関連グループの登場とブレイクの過程で、駆け出しアイドルは体を張るものという風潮が昔以上に一般的になったような気がします。当のアイドルからも、そういった見方を聞くようになりました(先日の「乃木坂工事中」)。

AKB48本体は2008年頃から2010年代前半頃にかけて日本テレビ「AKBINGO!」で粉・クリーム・面白メイクなどを比較的高い頻度で使用し、その後もときどきそういった企画を採用してきました。

もし仮にこのブログからAKB48及びその関連グループの記事を除外したとしたら、アクセスの多かった記事のかなりの部分が消えてしまうのではないかと思います。上記のような傾向が本当に生じたかどうかはともかく、この10年のテレビシーンにおける大きな供給源の一つだったことは間違いなさそうです。

個人的には同じくパイ投げを多用していたアイドリング!!!の名前も挙げておきたいところですが、メインの番組がCSだったこととAKBほどのブレイクを果たせなかった点で、アイドル全体の体張り文化へのアイドリング!!!の影響がどれくらいだったのか、わかりません。

上記のうち(5)のみはだいぶ推測や印象が混じるので微妙ですが、(1)~(4)に関しては、比較的目に見えやすい大きな変化と言えるのではないかと思います。

私が特に気になったのは上記5点ですが、これらとは違った部分に注目される方もおられるかと思います。皆様はこの間の変化をどのようにお感じになりますでしょうか。

■スマートフォンとSNSがすべてを変えた

近年、ネット全般へのスマートフォンとSNSの影響は非常に大きいですが、上記(1)~(3)の変化についても、スマホとSNSの普及なくしてはありえなかったことだと思います。

動画を撮って仲間うちで見せ合ったり他の人に発信したりするという行為の技術的・心理的ハードルが、スマホとSNSによって劇的に下がりました。(1)の顔面ケーキも(2)のハロウィンも、それを動画や写真で撮って友達同士で見せ合ったりSNSにアップロードしたりすることで、流行と定着が加速した面があるように思います。

おそらく(4)の動画サービスの普及も、スマホやタブレットで視聴できるということが普及に一役買っているものと思われます。そういったネット動画サービスはCS放送と競合するように思いますが、CSは今後は苦境になっていくかもしれません。いずれは地上波と競合するまでになるのでしょうか。

■未来予測は難しい

今後さらにどう変化していくのかも気になるところですが、こういった未来予測は難しく、3年後ですら正確には予想できそうにありません。以前は顔面ケーキやハロウィンの仮装がこれほど一般に広まるとは、まったく想像できませんでした。

専門家ですら、たとえば以前に、Facebookのような実名登録は日本のネットユーザーには馴染まないので定着しないとか、一般人がネットに素顔を見せるユーチューバーのような活動は日本に根付かないとかいったような論評を書いているのを見かけたことがありますが、現状はご覧の通りで、Facebookもユーチューバーも日本で当たり前になっています。

一見すると確固たるものに見える要素ですら、いくつかの条件が揃えば簡単に風向きが変わってしまうとすれば、正確な未来予測は不可能に近いと言えそうです。

どのような変化であれ、パイ投げや顔塗りを発信する人がさらに増えて行くような変化だったらいいなあと思う、2019年の正月でした。

新春コラム 一般のMessyシーンをめぐる変化について振り返る」への6件のフィードバック

  1. 以前に比べるとメッシーや顔塗りなどのフェチに対する心理的なハードルが下がったのと引き換えに背徳感が薄れて少し寂しくもありますね。

    • それはあるかもしれませんね。罰ゲームとしてのハードルも低くなってますね!

  2. 今と昔で大分違ったんですね~。
    ほとんどが共感できて、かなり興味深い内容でした。
    最後の文の「簡単に風向きが変わってしまうかも」というところに現在の西武そごうcm問題があてはまりそうですね。自分もかなり色んな所で見かけてるので、世間からのパイ投げの価値観が変わって来そうで怖いです。

    • SNS時代になって話題性が増幅しやすくなっているので、そこは怖いところですね。無関係のところに変な萎縮が起きなければいいなあと思います。

  3. 確かにAKBが登場する以前、モー娘あたりの頃は正月特番で滑り台クイズ的な企画があっても大体芸人が身代わりで汚されていたことが多かったのを思い出しました
    TVでしかやれないような大掛かりなセットなどを使ってのメッシーシーンにおいてはやはりAKBのような体を張れるアイドルの存在は大きいと思います

    • モーニング娘。はあまりよごれないアイドルでしたね。そのぶん、辻希美のバカ殿とかは印象に残ってます。

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